店舗用約10cmフルレンジスピーカー音質特性比較 Vol.5 VICTOR SP-M11 その1

スピーカー比較の第5弾です。
本来ならBOSEの周波数測定といきたかったのですが、視聴場所を変更してしまったため、撮影の都合でVICTOR SP-M11の分解からになってしまいました。
新しい視聴場所は、クオンサウンドの機材倉庫です。
そこならかなりのボリュームを出しての視聴もOKなのですが、なにせ地下で照明も最低限しか備え付けていないので撮影ができません。
とりあえず、すべてのスピーカーの撮影をして視聴に入りたいと思います。
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さて、今回のVICTOR SP-M11ですが、ネットを探してみても正確なスペックが出てきません。
Victorの公式サイトでも、過去の製品一覧にありません。
かろうじて残っているのは、店舗・施設の固定設置用アンプとセットで販売されていた形跡のみです。
どのようなスピーカーかは、分解してみないとわかりません。
まず、ネット上で調べた最大入力ですが、150Wとなっていました。
スピーカーの裏を見ると、230Wとなっています。
まー、このへんの言い回しもメーカーによってピーク入力だったり、最大許容入力だったりとはっきりしませんが、とりあえずこのスピーカーは一瞬であれば230Wまでは耐えられるということがわかりました。
このサイズのスピーカーとしてかなりの耐入力です。
またフォン端子もあり、やはりPA用途を意識しているのがわかります。
サイズはほぼBOSEと同じ。
若干、Victorが大きいくらいです。
分解の手順もBOSEとほぼ同様です。
サランネットを外し、フロントのネジを外すだけです。
中には吸音材が2枚入っています。
通常はそのまま入っている吸音材が不織布の袋で覆われています。
これはかなり親切な設計で、吸音材のホコリが飛び散ったりしません。
しっかりとコストがかかっています。
次にネットワークを外してみます。
裏にはBOSEよりも大きめなコンデンサーとコイル。
同様にハイカットとローカットをしてバイパスするためでしょう。
そして中域おさえ耐入力を高めるためにセメント抵抗がどどんと4つ並んでいます。
またまた設計がしっかりしているのは、そのネットワーク基盤がすべて、裏返しにBOXにつけられていることです。
過入力を続けた場合、コイルはかなり熱をもちますが、その熱で吸音材を焼かないようにとの配慮でしょう。
基盤の裏にはおそらく熱を通さないための黒いフィルムも貼ってあります。
実はBOSE101はネットワークの上にスポンジがのっていて、過入力を続けるとスポンジが焼けることがあります。
難燃性のスポンジでしょうから火を噴いて燃えることはないと思いますが、コイルやフィラメントの焦げ跡がはっきりついたスポンジをたびたび目にしますし、焦げ臭くもなります。
それはそれで、過大入力のサインになったりもするわけですが。
ともかく、このような設計思想を見ても、過大入力がおこりやすいPA用のスピーカーであることは間違いないようです。
ユニットはこれもBOSE同様に大きめのマグネットが目につきます。
スピーカーユニットの抵抗値はめずらしい2.2Ωです。
たしか、BOSEも2Ω程度だったと記憶しています。
能率が気になりますが、これはデータがありません。
コーン紙も見た目はBOSEとそっくりで、作りはより丁寧です。
ガスケットもきちんと装着されています。
見た目だけでなく中身も101とそっくりの設計思想で作られており、それを超えようと努力しているようです。
それが顕著に表れているのがバスレフポート。
かなり複雑な形状で、吸音材も詰め込まれています。
実はクオンサウンドでは、大きめの音でBGMを鳴らす店舗では、101のポートに吸音材を詰めることがあります。
そちらの方が不快な成分が減る場合が多いからです。
ここまで見る限り、この独特な形のポートも周波数測定をしながら、余分な音をカットするために設計されたものでしょう。
音を聞くのが楽しみになってきました。

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